
イベント企画力を生成AIで強化させる方法
イベントを企画する際、生成AIを活用することで、アイデアの幅や質を大幅に向上させることができます。その際、最も重要な要素の1つがプロンプト設計です。プロンプトとは、AIに与える指示のことで、その内容次第でAIのアウトプットが大きく変わります。
この記事では、2025年1月21日に開催したセミナー「『ChatGPT最強の仕事術』著者に聞く!BtoBイベント企画&集客時の生成AI活用法」でお伝えした内容から、弊社CEO清水とCOO池田が紹介した、BtoBイベント企画におけるプロンプト設計の基本と、実践的な改善ポイントについて詳しく解説します。
まずは生成AI活用における現在の課題を把握する
清水:私たちはクライアントから、「このようなテーマで、このターゲット向けにイベントを開催したい」といった大まかな要望をいただくことがよくあります。こうしたご依頼に対し、弊社では具体的な海外の登壇者をリサーチし、適切な講師をご提案しています。
その際に活用しているのがChatGPTです。例えば、クライアントの意向をもとに、ChatGPTを使ってイベントテーマのアイデア出しを行い、企画の方向性を具体化しています。ただし、より精度の高いテーマやアイデアを得るために、どのようなプロンプトを追加すれば良いかが課題です。
そこで、より効果的にイベント企画を進めるためのプロンプトの工夫や、ChatGPT以外に活用できるツールの選定についてアドバイスをいただければと思います。

池田:ありがとうございます。現状、このプロンプトでなんかイマイチだなと思うのって、どの辺ですか?
清水:今、ChatGPTに提供しているプロンプトがこちら(以下画像)です。イマイチだなと感じるポイントは、たしかに条件に合ったイベント企画アイデアを出してはくれるものの、本当にこれで成果が出るのかと疑問が残る点です。この企画で本当にクライアント様が求めているリードが取れるのか、参加者の求める内容をお届けできるのかといった点でイマイチに思うケースが多いです。
池田:なるほど。これに関しては非常に重要なポイントがあるので、これから解説していきます。
曖昧なプロンプトは新人への無茶ぶりと同じ
池田:清水さんのプロンプトを見てみると、ChatGPTに「このような条件だから、この方向性でイベント企画案を作ってほしい」と要望のみを伝えて指示していますね。これは、新しく入ったメンバーに対して、「この条件でアイデアを考えてみて」と無茶な依頼をしている状況と似ています。新人メンバーにとっては、どのようなアウトプットが求められているのかが明確でないことが課題になります。
このような状況では、「成果の出やすいイベントとは何か」という具体的な定義や条件がないまま、「とにかく良いものを作れ」という依頼になってしまいがちです。結果として、方向性が曖昧なまま進められ、偶然良いものが生まれることもあれば、期待に沿わないケースも出てしまうのです。新人メンバーもどうアウトプットすれば良いか、困ってしまいますよね。
これは、生成AIを活用する際にも同様の問題が発生します。例えば、ChatGPTにイベント企画のアイデアを考えさせる場合でも、指示(プロンプト)が漠然としていると、生成AIは最適なアウトプットを出せているか不安なまま回答することになります。もちろん生成AI自体は感情を持っていませんが、人間に置き換えて考えれば、「この回答で本当に適しているのだろうか?」と疑問を抱きながら作業を進めるような状態になってしまいます。
その結果、良いアイデアが偶然生まれることもあれば、的外れな提案が出てしまうこともあるという、いわば「運任せ」の状態になりがちです。生成AIをより効果的に活用するためには、適切なプロンプト設計と、期待するアウトプットの明確化が重要だと言えるでしょう。
AIを活用したイベント企画の精度を高めるには?
池田:では、具体的にどのようにすれば、より精度の高いイベント企画ができるのでしょうか?ポイントは、「要望」だけでなく「要件」と「具体例」を追加することです。具体的には、3つのポイントがあります。

① 要件を明確にする
「反響のあるイベントとは、どのようなものか?」を具体的な要件として定義することで、より良い企画が生まれやすくなります。例えば、以下のような条件を提示すると、生成AIも精度の高いアイデアを出しやすくなります。
- 数値データを含める(例:「○○%の企業が導入している」など)
- 最新の事例を取り上げる(直近の成功事例や注目の動向を紹介)
- トレンドを踏まえる(業界のホットトピックをテーマにする)
- 業界の第一人者を登壇者として招く(権威性を持たせる)
このように、「どんなイベントが反響を得やすいのか?」という条件を明確にしておくことで、生成AIに対しても適切なプロンプトを設定しやすくなります。
② 具体例を示す
さらに、生成AIにイベントのアイデアを考えさせる際は、過去に成功した具体例を提示することが重要です。例えば、
- 「過去に開催した○○のセミナーは成功したので、それに近いものを考えてほしい」
- 「このタイトルのイベントは反響が良かったので、似たコンセプトで考えてほしい」
といった形で、具体的な成功事例を生成AIに示すことで、より質の高い提案を得ることができます。
③ 要件と具体例を組み合わせる
さらに精度を上げるためには、①の要件と②の具体例を組み合わせて依頼することです。過去の成功例と、どのような点を重視すべきかといった要件を伝えれば、より的確なイベント企画が生まれやすくなります。
以上をまとめると、生成AIにアイデアを出してもらう際は、
- 要件(イベントの成功条件)を具体的に提示する
- 具体例(過去の成功事例)を参考として示す
- 期待するアウトプットの方向性を明確にする
といった工夫をすることで、運任せではなく、より精度の高いイベント企画案を得ることができます。
清水:具体例についてですが、過去に開催したセミナーのタイトルなどの情報を入力すればいいのでしょうか?
池田:そうですね。今回の要望は「お客様にとって意味のあるセミナーの企画を作ること」だと思います。そのため、過去のセミナータイトルでも良いですが、より適切なのは「作りたいアウトプットの参考例」を提示することですね。
イベント企画のプロンプト改善前/改善後
池田:ここからは、清水さんのプロンプトをもとに、精度を上げるための改善ポイントを解説していきます。こちらの画像の左側が清水さんの現在のプロンプトで、右側が添削後のプロンプトです。

池田:元のプロンプトでは、要望のみを伝えていたのに対し、改善後のプロンプトでは、トレンドやイベントテーマ案の要件、過去の優れたイベントテーマ例を追加しています。
プロンプトを設計する際には、まず背景や要件を整理し、その上でイベントテーマ案を具体的にしていくと良いでしょう。
- 背景情報の明確化
- なぜこのイベントを企画するのか?
- どんな課題を解決するためのものか?
- イベントテーマ案の要件
- どのような内容を含めるべきか?
- 参加者にとって価値のある情報は何か?
- 過去の成功事例の活用
- 実績のあるイベントタイトルや概要を参考にする。
- タイトルのみでなく、詳細なコンテンツ要素を提示する。
- 出力フォーマットの指定
- 例:「イベントテーマ案を10個挙げ、それぞれ1行の説明を付ける。」
- 例:「ターゲット層を明示し、想定される参加者像を含める。」
池田:プロンプトを設計する際、出力時のフォーマットを定義しておくと、アウトプットが揃いやすくなります。スライド内で{}で示されている部分です。例えば、年賀状やはがきを作るときに「ここに名前を入れてください」「ここに住所を入れてください」といった指定があるのと同じイメージです。
タイトルの部分でも、「ここは変わる」「ここは固定」といった形で、変数のように扱うことで、フォーマットが統一され、再利用もしやすくなります。
AI活用したうえでイベント企画を差別化する鍵は「人間の知見」
池田:よく懸念されるのが、「生成AIにイベント企画を依頼したら、内容が他社と似通ってくるので、差別化が難しいのでは?」という点です。たしかに、「背景情報」や「今回のテーマ」といった情報を入力する部分までは、誰にでもできるでしょう。
しかし、「過去に成功したイベントの共通項」や「成功したイベントの具体例」といった部分は、自分たちが体得した知見を言語化する必要があるため、他社が真似をすることは難しくなります。自社ならではの情報をAIに伝えることで、より自社の特色を出したイベント企画案を生成できます。その部分に人間の価値が出るわけです。

清水:なるほど。そこに人間としての価値が出てくるわけですね。他社には真似できない自社の知見をストックしておく必要がありますね。
池田:まさにその通りです。トップランナーマーケティングであれば、日々お客様の様々なイベント企画を支援しているので、いきなり情報をまとめるのではなく、お客様からのフィードバックを踏まえて、成功したイベントテーマに関する情報をコツコツ集めていくことが重要です。
イベント企画の成功要素の抽出にもAIを活用

池田:過去の優れたイベントテーマの共通項をもとにして作る「イベントテーマの要件」については、過去の成功したイベントの要素を抽出し、言語化し、抽象化するので、結構難しいです。過去のイベント例を伝えるだけなら簡単ですが、この場合は一旦自分が成功ポイントを言語化する必要があるので、きちんと分析しなくてはいけません。この時にも、生成AIを活用することができます。
具体的には、蓄積した過去の優れたイベントテーマ例をリストアップして入力し、「以下のイベントテーマから優れた点やポイント、共通項目を分析して提示して」と生成AIに指示します。すると、AIが過去に成功したイベントの成功要素を分析してくれるので、イベント運用の経験値がAIで使える知見に変わっていき、生成AIによるイベント企画のアイデア出しの精度も上がっていきます。
目的に適した生成AIツールを選ぶことが重要
清水:これらの作業をするには、ChatGPTが良いのでしょうか?それとも他の生成AIツールの方が良いですか?
池田:すべてのAIがネット上の最新情報を常に把握しているわけではないため、イベント企画の際に最新トレンドを取り入れるには、ツール選びの工夫が必要です。
ネットから最新の情報を取得したい場合、検索機能が付いたAI(例えばChatGPTのWeb検索機能やPerplexity AI)を使うと良いですね。現在、Claudeには検索機能が付いていないため、その点は注意が必要です。(2025年1月21日時点)
清水:つまり、AIに「最新のAIトレンドを反映したイベント企画を考えて」と依頼しても、検索機能がないと最新情報を知らないということですね?
池田:そうです。そのため、トレンドを取り入れる方法としては、以下の2つの選択肢があります。
- 検索機能を活用する → ChatGPTのWeb検索機能やPerplexity AIを使い、リアルタイム情報を取得させる。
- 背景情報を手動で入力する → 事前に最新トレンドをリサーチし、プロンプトの中に組み込む。
もし、トレンド情報をプロンプトに入れるのが面倒であれば、検索機能付きのAIを使うのが手軽ですね。
プロンプトに検索機能を組み込む方法
清水:検索機能を使う場合、プロンプトにはどのように指示を入れればいいでしょうか?
池田:例えば、以下のようなプロンプトを作成できます。
『ターゲットが抱えている課題をネット検索した上で、それに基づいた最新のAIトレンドを反映したイベント企画を考えてください。』
こうすることで、AIが検索結果を踏まえて企画を提案してくれます。特に、トレンドを考慮したい場合には有効ですね。
逆に、検索機能を使わない場合は、自分で最新情報をリサーチしてプロンプトに盛り込む必要があります。例えば、「2024年のAIマーケティングトレンドを踏まえたBtoBイベント企画を考えてください」といったように、具体的な情報を与えることで、AIが的確なアウトプットを出せるようになります。
イベント企画でAIの検索機能が必要なケースとは?
池田:検索機能を使うべきかどうかは、求める情報の種類によります。例えば、以下のような場合には検索機能が有効です。
- 最新トレンドを取り入れたい場合 → AIが過去のデータしか持っていないため、ネット検索機能が必要。
- 具体的な登壇者を調べたい場合 → 最新の業界リーダーや影響力のある専門家を知るには、検索が不可欠。
検索機能を活用すれば、リアルタイムのデータに基づいたイベント企画が可能になります。
AIの処理能力と出力の違いにも注意
池田:AIの処理能力や出力の精度は、同じプロンプトを入力しても異なることがあります。同じAIでもプロンプトの入れ方によって結果が大きく変わるため、何度も試して最適なプロンプトを見つけることが重要です。
清水:たしかに、英語と日本語で同じプロンプトを入れても、出力内容が全く違うことがよくあります。
池田:そうですね。実際のところ、日進月歩でAI技術が進化しているため、その時点で最適と思われる方法を試しながら、より精度の高いプロンプトを設計していくのがベストです。
清水:妄信的にChatGPTだけを使うのではなく、日ごろから様々なAIツールを試していきたいと思います。
生成AIを活用したイベント企画のアイデア出しは、ターゲットのニーズに応じた効果的なテーマ設定を可能にする革新的な方法です。本記事では、プロンプト設計の基本から、実践的な改善ポイント、具体例の提示までの流れを解説しました。これらのポイントを活用すれば、AIが提案するアイデアの質を大幅に向上させることができます。
また、生成AIを利用した他社と差別化できる記事の作り方も解説しています。ぜひご覧ください!
記事を読む方はこちら:https://toprunner-marketing.co.jp/knowhow/20250122-10/