海外インタビューの実施法:相手探しからコンテンツ化まで

海外インタビューの実施法:相手探しからコンテンツ化まで

Published On: 2025年2月8日Last Updated: 2025年2月8日

ビジネスをしていると「日本では今、こういう状況だけど、この領域がより進んでいる欧米はどのようなプロセスを経て今に至ったのだろう?」、「海外進出を検討しているので競合サービスについて調べたいけど、何が有名でどこが弱点なのだろう?」など、海外に関する疑問を持ったことはありませんか?そんな時、海外の方に直接聞けたらベストですよね。

もちろん、ビザスクなどの海外も対応している調査サービスを活用するのも手ですが、弊社はこれまでクライアントであるBtoB企業の経営者・幹部の方と海外の方をおつなぎし、上記のような情報収集目的のインタビューを実施してきました。

今回はその知見をお伝えすることで、お読み頂いている方と海外との距離をグッと近づけられればと、自分でインタビュー相手を探すところからインタビューの実施、実施後のコンテンツ化までまとめてみました。(長すぎたので本記事では、インタビュー相手を確定するところまで公開します)

※UX調査文脈のインタビューではなく、情報収集目的でのまとめになりますのでご了承ください。

※調査会社のプロ視点での内容ではなく、あくまでも弊社が実際にやったことのまとめである点をご了承ください。

STEP0.聞きたいことを整理する

STEP0とさせていただきましたが、今回は完全版なのでまずはここからスタートです。ずばり、聞きたいことを整理してみましょう。この段階では、インタビューをする目的やインタビューしたい相手を明確にするのがゴールです。

恐らく「海外の方に聞いてみたい」と思うくらいの段階なので、ある程度ざっくりとした大枠はあるかと思いますが、次のステップ「インタビュー相手を探す」に移る前に以下の項目を具体化するのがおすすめです。

海外インタビュー企画の準備リスト。インタビュー相手を探す前に具体化すべき項目として、1) 課題感、2) 聞きたいことの大テーマ、3) 大テーマから派生する質問、4) 業界、5) 企業(現在・過去在籍)、6) 必須条件(職種・役職など)が挙げられている。計画的なウェビナーやインタビューの実施に役立つ指針。

具体例がないとイメージしづらいかもしれないので、今回は以下とします。

1)課題感:日本はエンジニア採用市場の需要と供給バランスが崩れていて、適切な採用ができていない企業が多い。
2)聞きたいことの大テーマ:海外の優秀なエンジニア採用事情
3)大テーマから派生する質問:
 具体的にどのような選考プロセスを導入しているのか?
 採用チームが使っている海外のツールは?
4)業界:テック系
5)企業:現在、GAFAに所属している
6)その他、聞きたいことに関連した必須条件:リーダー/マネージャー以上でエンジニア採用について現場のノウハウがわかる人。

あくまでも上記はざっくりとした設計です。実際に行う場合は、会社で予算をかけて実施するのですから、予算稟議を通すためにもインタビュー実施後のアウトプットイメージや、それを踏まえたアクションも検討した方が良いでしょう。

Tips:上記では事業会社を例にしましたが、制作会社・代理店・コンサルティング会社といった支援会社や、企業から独立して個人で様々な業界を支援しているマーケターなども様々なクライアントを持っているため、質問のテーマによってはかなりおすすめです。場合によっては、インタビューをきっかけに関係が深まり、協業に至るという可能性もあります。

STEP1.インタビュー相手の探し方

調査の概要が整理できたら、次はインタビュー相手を探すステップに移ります。STEP0で整理した内容をもとに、条件を満たした方、つまり「聞きたいことの答えを知っていそうな方」を見つけていきます。1人だけにアプローチしても、返信が来なかったり日程や条件が合わない可能性が大きいので、ここではアプローチ先のリストを作っていきます。

リストはなんでもいいのですが、スプレッドシートがおすすめです。後でオファーしやすいように名前や経歴、プロフィールなどを整理しておきましょう。リストアップ人数の目安は大体30名程まずは作ってみて、アプローチ結果次第で順次増やしていくのがおすすめです。
●シートのサンプル:https://docs.google.com/spreadsheets/d/1TD2JH75A043ViZyTA18LI3sa_0A41pJrVxaZMPNXowo/edit?usp=sharing

Tips:探す際の超重要なコツを先にお伝えすると、海外情報を検索する際の肝は「キーワード選定」です。「日本語では意識せずにうまくググれているのに、英語だと全然ヒットしない…」とお悩みの方は、恐らくキーワード選定がうまくいっていないのかなと思います。

一例を挙げると、事例=case study、採用=recruiting,hiring、イベント=conference,event,expoなど、関連しそうなワードは組み合わせを変えてとにかく色々と検索してみるのがおすすめです。(大体、企業名やテーマ名、業界名+1~2ワードくらいで検索しています。)コツをつかめば、精度はだんだんと上がってくるはずです!

インタビュー候補者リストを作る際に、弊社が活用しているソースは以下の通りです。

・海外のイベントページ

海外では盛んに様々なテーマでカンファレンスやEXPOが開催されています。(テーマ+conference、events、 expoなどで検索するとたくさん出てきます)かなり泥臭いですが、大体プログラムまたはスピーカーを一覧できるページがあるため、そこから登壇テーマと経歴を見てインタビュー相手に良さそうな人がいたらリストアップしていきます。
●サンプルページ:https://venturebeat.com/events/transform-2025/

参照:VB Transform 2025: Enterprise AI Conference

・YouTube

YouTubeには、過去に開催したイベントのアーカイブ動画がたくさんアップロードされています。テーマを検索すると出てきますし、後ほど出てくる支援会社のチャンネルには、クライアント(事業会社)が事例として登壇していることもあるのでかなり穴場です。
●サンプルチャンネル:

Running RemoteRunning Remote – The Fastest Growing Conference on Workplacewww.youtube.com

・LinkedInなどのSNS

SNSの中では特にLinkedInがおすすめです。もちろんTwitterなどで投稿している人を探しても構いませんが、LinkedInの方がこの後にアプローチすることも考えると、ダントツで使いやすいです。
使い方は色々あり、
①プロフィールの情報から絞る→企業名や役職などの経歴やプロフィールに含まれるワードで検索。
②「投稿」や「イベント」から絞る→テーマを入力するとそれに関する投稿やイベントがヒットするのでそこから投稿者や登壇者をリストアップ。
あたりがおすすめです。
LinkedInは有料プランにアップグレードすると、よりアプローチ先が増えたり検索精度が上がるため、無料で物足りなくなったら課金を検討してみてください。

・海外記事

ForbesBloombergなどの海外ビジネス誌のウェブサイトや、Mediumなどのサイトにアクセスし、検索窓に関連するキーワードを入れます。
テーマに関連するインタビュー記事やニュース、ブログ記事がヒットすることがあるため、内容を見て執筆者やインタビューで登場する人の名前をまとめていきます。

・海外の支援会社

支援会社にヒアリングをしたい場合は、G2のようなサービス比較サイトで検索し、上位の企業をリストアップするのがおすすめです。もしくは、海外の同テーマのカンファレンスにスポンサーとして登壇している企業も良いでしょう。このやり方は、業界における海外のキープレーヤー探しにもおすすめです。

G2に関して詳しくまとめた記事はこちら👇

「G2」を徹底解説!海外SaaSの最新動向を調べ、自社の成長につなげる方法

~番外編~あんまりヒットしないかもですが、こんな手もあります

・海外の論文

論文などといった堅めの内容を求めている場合は、GoogleScholar もおすすめです。しかし無料で読める論文はかなり少ない印象です。

・リファラル

大学時代の友人や会社に海外出身の方がいれば、「知り合いに●●に勤めている人はいませんか?」と聞くことができます。あくまでも既存のコネありきになってしまうため、なかなか難しいかもしれませんが、割と協力的に紹介してくれるケースが多いです。

・海外版知恵袋的なサービス

「そもそもこれについて誰に聞けばいいのかわからない」など、もっとざっくりした段階で質問したい場合は、QuoraAnswersなど、質問内容に対し回答を募る、いわゆる海外版Yahoo知恵袋的なサービスに投稿して情報収集してからインタビューに臨むのもおすすめです。
弊社では過去に「Walmartにおける従業員教育」に関して上記のサイトで質問したところ、実際にWalmartに勤めている/勤めていた人から非常に参考になる回答をもらえました。

STEP2:インタビュー相手へのオファー&交渉&確定

ここまでが下準備で、ようやく相手へのアプローチにうつります!
STEP1でリストが完成したので、ここでは「どの人に優先的にアプローチするか」を決めて実際にオファーを送り、インタビュー実施に向けて詳細を詰めていきます。

・オファー送信に使うツール

オファー送信の際に使うツールは、LinkedInがおすすめです。理由は、海外の方はほとんどビジネスSNSとしてLinkedInを活用しており、こういった初対面の人からのオファーへのハードルが低いためです(逆にFacebookはプライベート用のイメージが強いため、避けた方がベターでしょう)。
無料プランだと多少アプローチ先の制限がありますが、つながり申請を駆使する、課金するなど工夫してください。

・オファー時の文面

文面は長いと読まれない可能性が高いため、簡潔に伝えることが重要です。ここでSTEP0で整理した内容が大いに役立ちます。

伝えたいことは、
「1)課題感」からあなたに「2)大テーマ」について1時間ほどZoomでインタビューさせていただきたく、ご連絡さしあげました。具体的には「3)質問」などについてお伺いしたいです。謝礼は○○ドルです。ご興味あればご返信お待ちしてます。」
です。
これだけだと少しいきなり感があるので、実際に送る際は英語のライティングお作法は守ったうえで

○○様
はじめまして、××と申します。
この度、「ソース(記事、インタビュー、動画、LinkedInなど)」を見て、「1)課題感」から、あなたに「2)大テーマ」について1時間ほどZoomでインタビューさせていただきたく、ご連絡さしあげました。具体的には「3)質問」などについてお伺いしたいです。謝礼は○○ドルです。ご興味あればご返信お待ちしてます。
××より

と送るのが無難です。その人が聞きたい内容について話せるかわからない場合は、「これについて話せる方をご存じでしたらご紹介ください」とお願いしてみるのも手です。

LinkedInでのやりとりを希望しない場合は、アドレスを載せるのも良いでしょう。オファーを送信したら、候補者シートのK列「オファー」にチェックを入れ、L列の結果に進捗を記入していきます。
2〜3日待っても返信がなければ、どんどん別の人にオファーを送っていきましょう。(めげないのが大事!)

・交渉&調整

インタビュー自体がOKになったら、次は具体的な条件決めに移ります。相手に同意を得なければいけないのは、
日程(時差があるので必ず確認する)
謝礼まわり(金額や支払方法、支払のタイミング、請求書ルールなど)
・ツール(インタビューを行う際に使うウェブ会議システム)
の3点が主になります。

日程については、時差があるので事前に実施可能な時間帯を確認しておきましょう。また、海外の方は世界中飛び回っている方も多いので、LinkedInのプロフィールに登録された住所だけでなく、「インタビュー当日にどこにいるか」を必ず確認してください。

日程が確定したら、インタビュー相手と社内の参加者宛にGoogleカレンダーに予定を入れて知らせてください。Googleカレンダーであれば、相手の現地時間でのカレンダーで確認ができ、「時差が間違っていた」や「サマータイムを忘れていた」といったトラブルを防ぐことができます。

謝礼の支払は、圧倒的にWise(旧TransferWise)がおすすめです。手数料が他社と比較して安く、操作も簡単なため愛用しています。法人アカウントも作成可能です。

ツールは、同時通訳でなければGoogleMeetsやMicrosoft Teamsなどでも構いませんが、同時通訳で実施する場合はZoomがダントツでおすすめです。

・契約締結

本格的な契約書ではなくとも、日付や双方のタスク、謝礼などをまとめた作業範囲記述書を結んでおくと安心です。
海外では「SOW (Statement Of Work)」と呼ばれており、プロジェクト開始時に作成し、いつまでに双方が何をやるかなどが明確になっています。
トラブルを避けるためにも、このような文書締結は必ず行うことをおすすめします。

Tips:インタビューを録画して二次利用する場合は、しっかり用途等すり合わせた上で作業範囲記述書に残しておきましょう。

STEP3:インタビュー前の準備

インタビュー相手が確定したら、次はインタビュー当日に向けた事前準備を行います。ここの準備をしっかりするか否かで当日の出来が全く異なりますので、万全を期して臨めるようにしましょう!

(1)質問リストの準備

当日いきなり質問するよりも事前にある程度質問リストを共有しておいた方が、回答者が調べたり考えを整理したりする時間ができるので回答の精度が上がるでしょう。そのため、事前に質問リストを作成し数日前には共有しておくことをおすすめします。

時間が足りなくなることも想定し、優先度の高いものを上から順番に記入してください。シートはスプレッドシートがやはり便利です。後で整理するためにもまずは日本語で記入し、別のシートに翻訳した英語版を用意すると良いでしょう。

質問数は、1時間のインタビューの場合、同時通訳であれば約12問、逐次通訳であれば5~6問は回答してもらえます。(回答者が1問あたりどのくらい話すかによって違うので、あらかじめ1問約〇分でお答えくださいと伝えておくのも手です)

(2)通訳の手配

同時通訳か逐次通訳によって、相場や必要な人数が異なります。知り合いに依頼できる人がいない場合は、OCiETeなどの通訳仲介サービスを利用するのがおすすめです。
クラウドワークスなどでも探すことは可能ですが、通訳スキルにかなりばらつきがある傾向なので、事前にしっかり面接などでテストをしたり該当領域について詳しいかなどもヒアリングすると双方の認識ズレを防げます。

通訳の依頼先が決まったら、必ず当日Zoomにログインいただくアドレスを聞いてください。Zoomの設定の際に必要になります。

また、入り時間の確認&Googleカレンダーの招待とスライドや動画などの資料があればその共有もしておくとスムーズです。

(3)ツールのセットアップ

インタビューを実施するツールの準備をします。Google MeetsやMicrosoft Teamsなど様々なツールがありますが、同時通訳で行う場合は、Zoomが1番おすすめです。(回線の安定性などの観点からも)

参加用のURLを発行したら、インタビュー相手や通訳者、社内の参加メンバーに共有し、Googleカレンダーにも入れておきましょう。
(Zoomの通訳機能を使った場合は、通訳者へはミーティングを設定した時点で自動で通訳者専用のURLがメールで送信されるため、URLの共有は不要です)

日頃Zoomを使っていても通訳機能はなかなかなじみがないと思うので、設定方法と開始後の操作、レコーディング時の注意について動画で解説しました👇

▶Zoomの通訳機能を使ったミーティングの設定方法

▶Zoomの通訳機能を使ったミーティングの開始~開始後の操作方法

▶Zoomの通訳機能を使った際のレコーディング注意点

(4)スライドの準備

スライドは必須ではないのですが、関係性構築のためにも自社の簡単な説明や当日の参加者紹介、インタビューの主旨説明などがあると良いです。
(ただしあくまでもメインはインタビューなので、冒頭3分以内に収める)

英語力に自信がなくても、スライドに文字があればある程度の意思疎通はできるのですべて通訳に任せきりではなく、自分でコミュニケーションをとることもできます。

(5)リハーサル

時間に余裕があれば、リハーサルを行いましょう。特にZoomで同時通訳で実施する場合は、社内の誰かを通訳者に見立ててZoomの操作方法に慣れると安心です。(私はしっかりリハーサルしたものの、当日画面共有をした途端通訳のボタンがなくなったと勘違いしてあたふたしてしまいました苦笑)

参加者が複数いる場合は、進行する人・誰が質問をするか・追加質問がある場合のやりとり方法・議事録係・タイムキーパー・レコーディング係(最低2名)などの役割分担をすると、より充実したインタビューになるでしょう。

進行について打ち合わせすべきことがあれば、通訳の方も交えて行うと良いです。そこまで話す内容がない場合は、当日10分前に集合してもらいそこですり合わせても構いません。

Tips:前日には念のため通訳やインタビュー相手に「明日はよろしくお願いいたします。」などのリマインドメールを送っておくと安心です。

より良い質問をするために!質問力を高めるtipsについては👇の記事をご覧ください。

インタビューで情報を最大限引き出すための質問のコツを徹底解説

STEP4:インタビューの実施

いよいよインタビュー当日です。
最初はテンションを少し高めに「How are you?」、「忙しい中お時間をありがとうございます。」と感謝の意を伝えてから始めましょう!
リハーサル通りに進めていけば、きっとバッチリです。

Tips:相手のその後の予定があることもあるため、質問を聞ききれていなくてもインタビュー時間は必ず守るのが基本です。もし延長しそうな際は、無理に進めず確認しましょう。

STEP5:実施後の御礼とコンテンツ化

・実施後の御礼

終了後は御礼メールを送り、事前の取り決めに則って請求書受領後に謝礼の支払いを行います。
前述の通り、支払いはWiseが圧倒的に手数料の安さと利便性からおすすめです(国によっては対象外の場合がたまにあるので事前に確認必須)。他にはPayPalなどが一般的なようです。

・コンテンツ化

インタビュー相手との取り決め次第でどこまで活用できるかに差はあるものの、オリジナルコンテンツとして非常に価値の高い動画が撮れたので利活用したいものです。
用途としては、
●外部公開OKの場合
・ホワイトペーパー
・オウンドメディアの記事
・YouTubeの自社チャンネルの動画
・メルマガ
・TwitterなどのSNSの発信
・広報でのアピール
・採用ページでのアピール

●外部公開NGの場合
・社内教育:勉強会で上映し、動画の内容をもとに部署横断でディスカッション
・新規事業のブラッシュアップ(内容をもとに仮説検証)
・営業チームのトーク力アップ(海外の事例を交えて話せる)

などが考えられます。

コンテンツ化する際はテキストか動画のどちらかになりますが、弊社がおすすめするツールを一部ご紹介します。

●文字起こしに便利なツール
・日本語の場合:Notta(https://www.notta.ai/
・英語の場合:Otte.ai(https://otter.ai/home

●動画に字幕を付けるのに便利なツール
・Vrew(https://vrew.voyagerx.com/ja/

詳しい使い方も👇の動画で紹介しているのでぜひご覧ください。

ワンクリックで英語が日本語に!Vrewを使って英語動画に日本語字幕を付ける方法

Vrewの有料版なら使える、「クラウド共同編集機能」のやり方(実際の操作画面付きで解説)

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました!

私たちは上記のような海外インタビューや海外有名企業の方を招いたオンラインセミナーの企画運営を通じて、日本企業様の事業成長スピードを上げるご支援をしています。少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。