Salesforceから学ぶイベント成功のポイント

Salesforceから学ぶイベント成功のポイント

Published On: 2025年2月3日Last Updated: 2025年2月3日

本日のテーマは「Salesforceのイベント戦略とは?Dreamforceに学ぶ成功の秘訣」です。Salesforceは、毎年世界最大級のBtoBイベント「Dreamforce」を開催し、40,000人以上が参加する大規模イベントとして知られています。本記事では、Salesforceがどのようにイベントを成功に導いているのか、具体的なポイントを解説します。

Salesforceイベント「Dreamforce」の規模と影響力

まずはSalesforceが毎年開催しているDreamforceがどれだけすごいのか、数字の面から見ていきましょう。

・開催期間:3日間(8時~17時まで)

・会場参加チケット:2,499ドル(早期割引で1,499ドル・1,999ドル)

・主な登壇者数:64名

・セッション数:1,000以上

・参加申込者数(2023年度):会場参加4万人以上、オンライン20万人以上

参加費用が約21万~36万円という高額ながら、毎年4万人以上の人が来場するそうです。また、オンラインでは海外からの参加も可能なので、2023年度のDreamforceには20万人以上が申し込みしたとのデータがあります。セッション数については、オンラインで視聴できるものは限られていますが(それでも1日25個のセッションは非常に多いですね)、会場では交流会を含む1,000以上のセッションが開催されるそうです。

また、主な登壇者数については、「Speakers(登壇者)」のページに紹介されている方の数だけで64名おり、紹介されていない方を含めるともっとたくさんいます。イベント企画会社の立場からすると、これだけの規模のイベントを開催するのにどれだけ予算と人員をかけて毎年開催しているのか、非常に気になります。

Salesforceのイベント戦略① 豪華な登壇者で話題を生む

Salesforceのイベント「Dreamforce」の最大の見どころの一つは、登壇者のラインナップの豪華さです。CEOを務めるマーク・ベニオフはもちろんのこと、今年はNVIDIAのCEOやAnthropicの創業者、RunwayのCEOなどが登壇しました。去年に続き、SalesforceがAIに注力しているのもあり、AI関連のセッションが多い印象を受けました。

特筆すべきはビジネス界の著名人だけでなく、ハリウッドスターやオリンピック選手も登壇しています。『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞を受賞したハリウッド俳優のマシュー・マコノヒーやケイト・ハドソンが今年はゲストとして登壇していました。過去にはウィル・スミスやスターウォーズを手がけたジョージ・ルーカスなど名だたる著名人が登壇し、話題となりました。

また、今年はなんとX JAPANのYOSHIKIさんも登壇しています!(まさか日本人が登壇していると思わず、最初素通りしそうになり、びっくりしました)

ちなみにマシュー・マコノヒーをゲストとして招聘するのにおよそ2,900万円かかるそうなので、登壇者の謝礼だけでも、ものすごい金額になりそうです。そもそもの予算感が桁違いですね。

Salesforceのイベント戦略② 魅力的なコンセプト設計

Dreamforceのコンセプトは4つあります(英語ですが、Dreamforceについての記事はこちらからご覧いただけます:https://www.salesforce.com/blog/what-is-dreamforce/

1.Learn(学ぶ):ビジネスの課題を解決するための新しい革新を、ブレイクアウトセッションやトレーニング、認定機会を通じて発見しましょう。最新技術のデモにも参加できます。

2.Connect(つながる):新しい人々に出会い、古くからの仲間とも再会しましょう。同じ志を持つTrailblazerから学び、素晴らしいパートナーのネットワークに触れ、新しいアイデアが生まれる瞬間に立ち会いましょう。

3.Have fun(楽しむ):Trailblazerたちが集まれば、それはパーティー。そして、Dreamforceはその中でも最大のパーティーです。Dreamforceはコミュニティの祝祭です。

4.Give back(社会貢献):参加者は行動やボランティアを通じて、多様性、包摂性、平等、そして持続可能性の向上に貢献します。

こちらがDreamforceの紹介動画です。

会場の雰囲気を見ると、鮮やかで楽しくなるようなブースや装飾がほどこされ、企業のイベントというよりはテーマパークのような印象を受けます。オンライン参加者からの見え方も非常に工夫されており、ただZoomの配信映像を流すのではなく、テレビ番組を見ているかのような配信になっていました。任意で他の参加者とのチャットに参加できる仕様になっています。

下の画像はDreamforceでも有名なピッチコンテスト「Dreampitch」の様子で、右側のチャットでは出場者が話すビジネスプランについて突っ込みを入れたり、アイデアへの賞賛コメントを投稿したり、非常に盛り上がりを見せていました。

(ちなみにDreampitchの優勝者には、賞金約2500万円が授与されます。)

また、Salesforceのキャラクターであるアインシュタインなどの着ぐるみと写真を撮れたり、写真映えするフレームやブースなどが用意されています。毎年公式のハッシュタグを用意しているため、SNSで投稿する人も多いです。

「学ぶ」は多数のセッションで、「つながる」は交流会で、「楽しむ」は上記のような施策で、「社会貢献」は地球環境に関するテーマ設定や寄付目的のイベントを通じて参加者への態度変容を促しています。4つのコンセプトをきちんとイベントに反映されている点が非常に印象的でした。

Salesforceのイベント戦略③ AI・データ活用など旬のテーマを網羅

上記のコンセプトに則って、なんと3日間で基調講演含むセッションが1,000以上開催されたのです。できるだけ多くの人の関心を惹きつけるには、幅広いかつ今話題のテーマを設定することが重要です。今年のDreamforceのテーマ設定は主に以下の5つに分けられていました。

1.AI

2.データ活用

3.カスタマーリレーション

4.自動化・効率化

5.セールスフォースの紹介

また、セッションについても他社ではあまり見ない、参加者を楽しませるための非常に面白い工夫が施されています。

●メイン基調講演:最新かつ最高の、Salesforceの発表のすべてを聞く場所(例:CEOマーク・ベニオフの講演など)

●Dreamfest(ドリームフェス): 息抜きとパーティーの時間。 今年は伝説的シンガーであるエルトン・ジョンが登場。UCSFベニオフ小児病院への寄付を募る場でもある。

●True to the Core(”核心に迫る”)”: Salesforce のシニアエグゼクティブに直接質問できるチャンス。 これまでのQ&Aでは、Workflow RulesとSalesforce Classicの廃止時期について質問された。 

●注目のインタビュー:著名人が毎年登壇し、さまざまなテーマでインタビューを行う。今年は、『スラムドッグミリオネア』で主役を務め一躍有名となった俳優デーヴ・パテールや、国連平和大使のジェーン・グドール博士らが登壇する。

最初はチケット代が高額のように感じましたが、このように有名アーティストのライブ費用や有名人のインタビューをいくつも見れるとなると、価格設定的には妥当にさえ思えてきますね。

また、株主総会でもない限り、企業の役員陣に直接質問する機会はなかなかないので、True To the Coreで問いかけられるようにしている点も興味深いです。(ネーミングも面白いです)

ポイント:「認知向上」だけの施策ではない

イベントの中身において特筆すべきなのは、Dreamforceは認知向上だけでなく、既存顧客との交流まで全てのファネルを網羅したイベントとなっていることです。通常、このようなお祭り感のあるイベントは一般的にマーケティングファネルで言うと、認知獲得のための施策となります。自社を知らなかった人に、イベントをきっかけに知ってもらい、その後に自社サービスに関するセミナーや資料の案内を行って、徐々に見込み顧客の関心を高めていくのです。

しかし、Dreamforceのすごいところは、新規顧客だけでなく既存顧客のロイヤリティを上げるところまでしっかりとカバーされている点です。セッションの中には、Salesforceについてもっと深く知れるセッションやその場で申し込みができるハンズオンセッション(製品体感セミナー)が用意されており、検討段階の顧客を、イベントを通じてナーチャリングできる工夫までされています。

ちなみにハンズオンセッションの申し込みページには一般的なフォーム入力だけでなく、WhatsApp(海外でよく使われているLINEのようなアプリ)や電話番号の記載があり、より身近なサポートが得られそうに感じました。認知向上だけでなく、カスタマージャーニーのどの段階にいる顧客も対象になるイベント設計がされているのが本当にすごいです。

Salesforceのイベント戦略④ スポンサー活用でイベント規模を拡大

これだけの内容でイベントを開催するには、当然多額の費用がかかります。そのため、Dreamforceでは200社以上のスポンサーを募り、イベントを実現しています。Salesforceの大口顧客である可能性もありますが、恐らくSalesforce社員はDreamforceのスポンサー獲得がKPIに含まれて毎年多額の協賛を集めているのではないでしょうか。

主なスポンサー企業としてはアクセンチュア、デロイト、マッキンゼー、pwc、AWS、BCGなど名だたるグローバル企業が挙げられます。生憎、スポンサー出展費用は申し込みをしないとわかりませんでしたが、協賛金額に応じてプロモーションできる内容が異なるようです。

例えば、先ほど紹介したセッションの画像ですが、オンライン参加者から見ると左下にQRコードが表示されています。「QRコードをスキャンしよう」とあり、スマホで読み込んでみると、パイオニアスポンサーであるデロイトデジタルのホームページに遷移しました。

個人的に少し残念に思ったのは、遷移後はただ企業のトップページに飛ぶだけだった点です。視聴者の関心に合ったホワイトペーパーのページなどに飛ばせば、リード獲得につなげられる可能性があるので、ただ公式HPのトップに飛ばすだけでは、非常にもったいないと感じました。

自社のイベントを成功させるためには

Salesforceのイベント「Dreamforce」から学べることは多く、自社のイベント企画にも活かせます。成功の秘訣を取り入れることで、より多くの参加者を引きつけ、イベントの成果を最大化できるでしょう。改めておさらいすると、以下の通りです。

①コンセプトを決める:まずはイベントのコンセプトを決めましょう。それに即してイベントページやメールの内容など、参加者へのあらゆるブランディングを意識します。

②セッションテーマを広くする:より多くの人に関心を持ってもらえるようにしましょう。AIなどのような今話題のテーマを取り入れることも重要です。

③魅力的な登壇者を用意する:1名でも良いので目玉ゲストの登壇を手配しましょう。広告のコンバージョンがきっと改善します。

④スポンサー/共催を募る:国内外の著名人を呼ぶには100~数百万円費用がかかります。自社だけで負担するのが難しい場合は、スポンサーを募るか、他社との共催企画にすることで費用を分担しましょう。

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