Metaの採用戦略とAI活用:エンジニア採用の最新トレンドとは?

Metaの採用戦略とAI活用:エンジニア採用の最新トレンドとは?

Published On: 2025年2月5日Last Updated: 2025年2月5日

Metaで採用マネージャーを務めるAustin Bonner氏に、最新の採用戦略エンジニア採用におけるAIの活用についてインタビューを行いました。Metaの人材採用プロセスや、AIを活用した効率的な採用手法について詳しくお話を伺いました。

Metaのエンジニア採用戦略とAI活用の詳細を知りたい方は、フル版のインタビュー動画をご覧ください!(インタビューはこちら:https://youtube.com/watch?v=B7gy7jjQyrA%3Frel%3D0

清水 それでは、本日のインタビューにご参加いただきありがとうございます。前回はギブリー様のイベントにご登壇いただきましたね(米国・日本の”最前線”テクニカルリクルーティング)。またご一緒できて嬉しいです。まず、簡単に自己紹介をお願いできますか?

MetaのリクルーティングマネージャーAustin Bonner氏のプロフィール画像。AIを活用した採用戦略やエンジニア採用の最前線について語る。Googleでの技術職リクルーティング経験を活かし、Metaの人材獲得をリード。

オースティン氏 もちろんです。オースティン・バーナーと申します。Metaで採用リーダーを務めています。具体的には、当社のインフラデータセンターの成長をサポートしています。これは、当社のアプリファミリー全体、AI、生成AIなど、当社の行うことすべてを支える基幹部分です。現在、Metaに約10年間勤務しており、現在はシアトルを拠点としています。

Q.Meta社における全体的な採用プロセスとは?大手企業のエンジニア採用プロセス

清水 最初の質問は、Metaの全体的な採用方針についてです。Metaの採用基準やエンジニアの採用規模、職種の配置、全体的な採用について教えていただけますか?

Metaの採用戦略に関するスライド。リファラル採用が10〜20%を占め、多面的な戦略を活用。エンジニア採用ではスキルとビジネス感覚を重視し、最終決定はコンソーシアム方式で行う。

オースティン氏  Metaを含む多くの大手テクノロジー企業は、さまざまな戦略を駆使して才能を見つけています。トップ企業では、強力な紹介プログラムが採用活動の10~20%をカバーするのに役立っています
しかし、それ以外のエンジニアリングや非エンジニア職の採用は、積極的に受動的な人材を引き付ける採用チームによって行われるのが一般的です。新設された人材採用チームもあり、大学や博士課程のリクルートを含むキャンパス採用戦略に焦点を当てています。

特定の型にはまった方法があるわけではありませんが、候補者を探すトップリクルーターは、複数のプラットフォームでの反復可能なブール検索や、学術論文や会議の情報収集、ビジネスリーダーを巻き込んで有力な候補者を引き付けるなど、多面的な戦略を活用しています。
また、テックトークに参加したり、Google Scholarなどの学術出版プラットフォームを活用したりもします。

大手企業のエンジニアリング人材には、技術的な能力だけでなくビジネス感覚も求められます。特にシニアエンジニアには、複数のプロジェクトをエンドツーエンドで管理した経験や、技術的および非技術的な利害関係者との効果的な連携ができることが重要です。技術スキルの審査やコーディングテストは、職務の種類に応じて重点が異なることがあります。

エンジニアリング採用では技術スキルだけでなく、非技術者にもわかりやすく説明できるコミュニケーション能力が求められます。これは採用戦略の中でも重要なポイントです。最終的な採用決定は、複数の社員が面接のフィードバックを評価し、採用かどうかの推奨をするコンソーシアム方式で行われます。

Q.AIは採用戦略をどう変えたか?採用プロセスの進化

Metaの採用戦略におけるAIの活用事例を解説したスライド。AI採用ツールが履歴書のスクリーニングや面接のスケジュール調整を自動化し、リクルーターの業務効率を向上。さらに、離職率の予測を行い、人員計画に活用。週あたり数百時間の工数削減に成功。

清水 それはとても興味深いですね。Metaの採用基準やプロセスについて、具体的な話を聞くのは初めてです。AIがエンジニアの採用プロセスや基準にどのような影響を与えたかについても教えていただけますか?

オースティン氏 AIに関しては、採用活動全体を見渡すと、採用は複雑なビジネス機能であり、各プロセスが同期して効果的に機能する必要があります。AIの登場により、特定のプロセスが自動化され、長時間かかる作業が簡略化されるようになりました

AIを活用したツールは、履歴書の基本的なスクリーニングや面接のスケジュール調整などのタスクを部分的に自動化するのに役立っています。Metaでは、スケールの大きさゆえに自社開発のツールを使用することが多いですが、市販の企業向けソリューションも多く存在します。

AI活用が進む現在、採用戦略において特に影響が大きいのは履歴書のスクリーニングと面接スケジュール調整の自動化。これらのツールの中には、候補者のランク付けやスコアリングを行い、迅速に最も関連性の高い候補者をリクルーターに提示するものもあります。これにより、候補者のマッチングが改善され、リクルーターが現在または将来の採用ニーズに対応できるように、AIアルゴリズムをトレーニングして自動化されたフローを構築します。

面接のスケジュール調整も、ここ数年で自動化が進んでいます。Metaでは、候補者の空き時間や面接官の空き時間を基にスケジュールを自動調整するAIツールを使用しており、これにより人的関与が不要になります。
AIは、採用プロセスにおいて予測分析にも活用されています。高度なワークフォースプランニングを行う企業は、自然言語処理を活用したディープラーニングモデルを構築し、特定のチームや職種における自然な離職率を予測しています。このデータを長期的な人員計画に活用することで、より効率的な採用が可能になります。

AI導入により週数百時間の工数削減に成功

清水 自社開発とはさすがですね。 AIツールの導入によって、どのくらいの工数が削減されたと思いますか?

オースティン氏 良い質問ですね。特にスケジュール調整に関しては、かなり大きな効果があります。以前は、多くの大手テクノロジー企業が面接をスケジュールするためにコーディネーターのチームを雇用していましたが、現在では事前設定された基準に基づき、AIが候補者と面接官の空き時間を調整して自動的に最適なスケジュールを提案します。これにより、週単位で数百時間の工数が削減されています。全体として、AIによる効率化は非常に大きなものです。

Q.優秀なエンジニアを採用するための採用戦略とは?

Metaのエンジニア採用戦略に関するスライド。リファラル採用、インセンティブ制度、ハッカソンの開催、大学との連携の4つの施策を活用し、優秀なエンジニアの獲得とブランドの可視性向上を実現。

清水 Metaでの採用マーケティング戦略についても教えていただけますか?以前のインタビューで、候補者をMetaの優秀なエンジニアに紹介することでモチベーションを高める取り組みについてお話されていましたが、他に行っている戦略があれば教えてください。

オースティン氏 最も重要なのは、社員のアウトリーチプログラムです。特定の分野に強いネットワークを持つ社員が候補者に直接連絡を取ることで、返信率が高まります。これらのプログラムは、適切なツールを使うことでスケールアップが可能です。成功を測るためには、候補者からのポジティブな反応率を追跡します。

プログラムの成功にはいくつかの重要な要素があります。まず、プログラムに参加する社員は、強力なプロフェッショナルネットワークを持ち、会社のブランドアンバサダーとして情熱を持って取り組める人であることが求められます。また、プログラムの期待事項を明確に伝えることも大切です。候補者に送るメッセージや、対応が必要なタイムラインなどを具体的に設定します。

インセンティブも重要です。アウトリーチに参加する社員には、ボーナスや表彰プログラムなどの報酬が提供されることが多いです。さらに、SNSを活用して社員が求人情報を自分のネットワークに広めやすくすることで、アウトリーチ活動を効率化します。

また、ハッカソンも採用マーケティング戦略の一つです。ハッカソンとは、特定のプロジェクトや課題に取り組むために人々がチームを組んで短期間で集中的に作業を行うイベントです。数時間から一週間に及ぶ場合もあり、企業にとっては、ブランドの知名度向上や将来のエンジニア採用のための優秀な人材パイプラインの確保に役立ちます。

最後に思い浮かぶのは、大学との提携です。トップ企業にとっては強力なキャンパス戦略が重要であり、新卒の人材を採用するパイプラインの構築とブランドの認知向上に貢献します。これらのチームは学年歴に合わせて活動し、インターンシッププログラムやメンターシップを通じて卒業生に道を提供します。ブランドの可視性を高めるためには、これらの取り組みが非常に効果的です。

Q.採用後に働き続けてもらうための工夫とは?

清水 日本では大学との密な提携がまだ一般的ではないと思うので、非常に興味深いです。
次の質問ですが、採用後のエンジニアの定着支援について教えてください。例えば、他の大手企業であるAmazonやGoogleなどとの競争がある中で、Metaはどのようなプログラムを提供してエンジニアの定着を促進していますか?ボーナスや高給が主な要因かもしれませんが、他にもあるのでしょうか?

Metaのエンジニア定着支援戦略に関するスライド。採用(見つける)→ 育成(育てる)→ 定着(保持する)の3ステップを重視。競争力のある報酬や福利厚生、短期間のハッカソン、柔軟な勤務体系(リモートワーク・圧縮労働時間制度)を導入し、エンジニアのスキル習得と社内流動性を促進。

オースティン氏 定着支援については、「見つける・育てる・保持する」というモデルを以前もお話ししましたが、このうち「育てる」と「保持する」が重要です。まず、競争力のある報酬と福利厚生が基本です。シリコンバレーの大手企業では、低いクリフ期間やクリフなしの包括的な福利厚生プランが一般的です。

さらに、短期間のハッカソンプロジェクトを奨励することで、エンジニアが新しいスキルを学んだり、新しい課題に取り組んだりする機会を提供し、社内の流動性を促進します。
柔軟な勤務体系も重要です。リモートワークや柔軟な勤務時間、場合によっては圧縮労働時間制度(週5日勤務を週4日などに短縮する代わりに1日の労働時間を増やす勤務スタイル)も提供されており、特にオンコール対応が多いエンジニアには有益です。

健康的なワークライフバランスを奨励することも重要です。オフィス内にフィットネスセンターやカフェテリア、ゲームルームを設置するなどのアメニティプログラムも役立ちます。また、メンターシップやコーチングプログラムも、さまざまなバックグラウンドを持つエンジニアを支援するリソースグループを提供しています。これにより、コミュニティ意識や帰属意識を高めています。

清水 ゲームルームがあるオフィスもあるんですね。素晴らしいです!Meaのオフィスを訪問することは可能でしょうか?

オースティン・ボナー: もちろんです。シアトルやメンロパークの本社での訪問を手配できます。さらに、私たちの日本人社員リソースグループでは、日本からの訪問者向けに日本語話者による正式なオフィスツアーも最近開始しました。ぜひ機会があれば調整しましょう。

Q.AI台頭によって予想される今後の変化や課題とは?

清水 では、最後の質問です。将来のエンジニア採用について、AIが採用プロセスに大きな変化をもたらしているとおっしゃいましたが、今後どのような変化や課題が予想されるでしょうか?

オースティン氏 まず最初に、競争の激化が挙げられます。特にAIなどの特定の分野において、優れたエンジニアリング人材の需要は引き続き高く、企業は優秀な候補者を獲得し、長期的に定着させるために激しい競争を繰り広げています。

もう一つの課題はスキルの陳腐化、または「スキルギャップ」と呼ばれるものです。テクノロジー業界は急速に進化するため、技術スキルは非常に速く陳腐化する可能性があります。そのため、企業は最新のスキルや専門知識を持つエンジニアを採用し続けるだけでなく、社内で新しい技術を学ぶ機会を提供する必要があります

リモートワークも引き続き大きなトレンドです。リモートワークの普及により、企業は採用戦略を適応させ、世界中のトップ人材を引き付け、定着させる必要があります。さらに、社員紹介はトップ人材の獲得において重要なソースですが、社員が積極的に紹介活動を行うためには、動機付けが必要です。
2020年から2022年の間、多くの企業がリモートワークを重視していましたが、2023年以降は物理的なオフィスに縛られたハイブリッドワークへと戻りつつあります。このように分散したオフィス拠点を持つ企業は、特定の地域での人材プールが限られているため、スキルセットを他の地域に移すための支援プログラムが必要になりますが、これにはコストや労力がかかります。

最後に、採用プロセスにおけるAIの活用の上限はまだ見えていません。これからどのようなプロセスがさらに自動化されるのか、とても興味深い時代です。

清水 少子高齢化が進む日本では、高度なスキルを持つエンジニアを採用するのは今後さらに困難になると感じますね。

オースティン氏: その通りです。採用活動では、特定の方法に依存しすぎてはいけません。ブランド力が強ければ自然と人材を引き付けることができますが、ほとんどの日本企業はそうではないでしょう。そこで、会社の文化や使命、価値観など、他社と差別化できる明確なストーリーを作ることが重要です。

単にLinkedInなどの求人サイトに求人情報を掲載するだけでなく、複数の戦略を組み合わせて人材を引き付ける必要があります。私たちの採用チームも多くのツールを駆使しており、どれか一つに依存することはありません。ある方法がうまくいかなくなったら別の方法に切り替えるなど、非常に柔軟に対応しています。日本の人事担当者には、こうしたリソースの豊富さが成功の鍵だとお伝えしたいですね。もう「ただ求人を出すだけ」では、十分ではありません。

清水 とても重要なポイントですね。視聴者がこのインタビューから力を得られることを願っています。ありがとうございました。

Metaの採用戦略とAI活用がエンジニア採用にどのような変化をもたらしているのか、オースティン氏に伺いました。AIスクリーニングや面接調整の最適化、採用マーケティング戦略など、多くの企業が参考にできる内容です。

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